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インボイスと電子取引―デジタルの罠 エッセンシャルワーク③
令和5年10月から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まる、そしてそのインボイス発行事業者の登録手続きが今月から開始された。導入の目的は免税事業者への益税の排除や、軽減税率導入に伴う税率の多数化に対応するためと言われている。
免税事業者は適格インボイスを発行できないから、取引相手が仕入れ税額控除ができなくなり、取引上不利になる。したがって特に企業相手の事業者は発行事業者にならざるを得ず、消費税負担が増えると考えられる。
またインボイスの様式等を変える費用や、登録番号の確認等、追加の手間や費用が掛かり事務コストは増加し、これらの社会的コストは多額になると考えられる。
そして益税があれば損税もある。例えば社会保険は非課税なので医療機関は売上の消費税はもらえず、薬剤等の仕入や外注費、消耗品等の諸経費は課税なので支払った消費税は損税になる。この分は保険診療報酬の増額で保険料の増額となり消費者の負担になる。
消費税と同じ仕組みの付加価値税が数十年前から導入されたEU諸国ではインボイス方式で行われてきた、それは欧州市場は国家間の取引が多く、税率等が違っており、また国内においても多種の税率があり統一的なインボイス方式でないと複雑になりすぎるからであった。そして当時はITも発達しておらず、インボイス方式を取らざるをえなかったという事情もある。
日本はまだ税率の種類は少なく、ITも発達しており、現在の帳簿+通常の領収書等で問題ないし、益税対策なら免税基準を引き下げるとか方法はいくらでも考えられる。
そしてまた電子取引に対する規制が来年の1月から始まる。ネット等の電子取引、見積書や請求書のメールでのやり取り等、電子データで決定するものの領収書等は紙の資料では認められず、検索機能付きの電子データで保存しなければならないようになる。
こちらもまた特に中小零細企業にとっては大きな負担になり、コロナ危機で消耗している企業はさらに疲弊し、倒産廃業に追い込まれるところも多いかもしれない。
インボイス方式と電子取引、デジタル化は電子インボイス推進協議会が設置されているように同じ思想から生まれている。それは国家による経済社会の統制であり、新たな利権構造を生むかもしれない。
デジタル化の波は避けて通れないが、使い方が重要である。囲碁や将棋のような一定の枠内の限定された使い方で、あくまでも人間が主体なら良いが、AI主導で人間がそのシステムの全体像が分からず、指示に従うだけというのは恐ろしいリスクがある。
デジタル化のリスクは最近でもNTT回線の障害、みずほ銀行のシステムダウン、フェイスブックの情報流失等大手でも問題が発生し、またサイバー攻撃(個人や組織、国家的な)も多発している。更に太陽フレアが地球に直撃したら大半のデータが消滅し、OSも動かずIT機器は使い物にならなくなる。
日本はコロナ追跡ソフトでも失敗したが、デジタルとアナログの調和統合を目指し、情報の社会的インフラの在り方を本質的なレベルから考え、行動することが必要である。
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