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日本再生の道 ― 伝統文化
失われた30年と言われ、また最近では世界における日本の没落が指摘されている。GDPでは近々ドイツにも抜かれようとしており、一人当たりGDPではG7では最下位であり、世界では30位を超え、経済的にはどんどん没落している。こうした中で僅かに成長しているのがインバウンド観光需要である。
最近では海外の人々の多くが求めているのは、先端技術や工業製品ではなく、日本の歴史、文化、自然であり、伝統芸能や伝統工芸であると言われている。その見聞や体験は他の諸国では味わえない事であり、西欧近代文明が転機に達している今、世界中の多くの人々が潜在的にも求めていることかもしれない。
伝統芸能には、能、狂言、歌舞伎、人形浄瑠璃、浮世絵、茶道、華道、雅楽、落語、古武道等多くのものがある。共通する特徴は、長い時間かけてその道を追求し、深く掘り下げていくことで、身体自体の使い方の極限まで追求する。体の使い方も単に外側の筋肉を鍛えるのではなく、インナーマッスルや骨、内臓、経絡、気、意識の世界にまで深く入っていく。
したがって達人と言われる人たちは、高齢になって、筋肉が衰えても芸は進化していく。筋肉を緊張させるのでなくリラックスして、意識の力で行動するからかもしれない。姿勢、呼吸、発声、体幹、軸、重力に乗る等々、表現の仕方は違っても身体技法は共通するものがある。
また伝統工芸にも様々なものがある。七宝、漆器、陶磁器、織物、染織品、和紙、木工、文具、仏壇、仏具、人形、扇等々。経産省指定の伝統工芸品は237品目ある。これらの伝統工芸品は長年にわたって技術が継承され、熟練した技に支えられている。これらは画一的な機械生産でなく、手仕事であり一つ一つの製品が個性を持って存在している。
日本人特有の繊細なタッチと職人的誇り、生涯をかけた情熱と進化する技能が伝統工芸を支えている。しかしながらこうした伝統工芸の多くは今衰亡の危機にある。現代人の多くはこうした工芸品と接する機会が少なく、これらの良さ、本質どころかどんなものかも分かっていない。逆に海外の人の方が興味を抱き、その良さが分かるのかもしれない。
明治時代、浮世絵や陶磁器、七宝などは万博でも話題になり、輸出産業の花形として多くの優良な製品が海外に流失した。これからの時代も伝統工芸を的確に育成していけば、海外にも市場は大きく広がるのではないだろうか。伝統工芸品の多くは各地域の地場産業として発展し残っているケースが多いので、地域ごとの特性を生かし、幼少期から接する機会を増やすことが重要である。またマイスター制度等による支援も必要かもしれない。
近代文明は機械による大量生産で、世界中同じような製品で満ち溢れ、多様性と言っても限られたものである。またAIにより考え方まで標準化され唯一の存在としての個々人の尊厳を失わせている。伝統工芸の復興は個人個人の個性を発揮する世界を拡げ、この意味では未来を築くものかもしれない。
また伝統芸能は身体を極限まで感じ開発することで、同じように近代人が失った人間本来の自然を回復する機会となるのではないだろうか。
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