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財務・経理と経営、金融と経済 2009年8月
浅 野 良 裕
今非常に厳しい経営環境の中で、売上が70~80%減少し、毎月大幅な赤字を出している企業もあります。しかし業績が悪くなっても資金繰りさえつけば倒産するわけではありません。逆に黒字でも資金が続かず倒産する場合もあります。これは企業の業績とお金の動きが必ずしも一致しないことからきており、この業績=付加価値を創造する生産、営業、開発等の活動と、資金の動きとを明確に区分するとともに、両者のバランスを取り管理することが大切です。そしてこの業務管理と資金管理の道具として経理・会計があり、損益計算書、キャッシュフロー計算書、貸借対照表はそのための基本的ツールです。資金が不足している時は即支払いに影響するのですぐに対応しますが、赤字が出ていても政府の援助等で借入をして当面資金に余裕がある場合には、損益面での改善対策が遅れがちになります。しかし借りたものは返さなければならず、将来に大きな負債を残す(又は資産を無くす)ことになりますので早急に手を打たなければなりません。しかもこの不況=変革期の後には、これまでの時代の顧客ニーズや経済社会システムすべてが新しい形に変化していくでしょうから、その予測対策も含めて対応していく必要があります。つまり単なるコスト削減だけではなく、新しい生活=生命活動に合った商品サービス、ビジネスモデルを創造し、再度現状を見直し、企業家として業を企てることです。つまりあくまでも付加価値を創造する経営活動が主体であり、財務・資金はその活動を円滑に行うために必要不可欠なものではありますが、それを支える補助的な役割であるはずです。この関係は経済全体にも言えることで、この主従関係が逆転したのがリーマンショック以来の金融危機の原因であり、金融と経済、金融機関と一般企業の関係の逆転です。企業はリスクを負って、商品サービスや情報を市場に提供し利益を得るために、人・物・金等に投資し、この投資のために出資や借入等による資金調達をしていきます。資金調達のためには、普通は自己資本だけでは足りず、外部から通常は金融機関からの借り入れが必要になってきます。したがって企業にとって金融機関との関係は重要であり、その方針の如何により大きく影響されます。バブル崩壊以前の高度経済成長期には、特に中小企業にとって借入金は常に存在しているのが当たり前であり、金融機関側もメインバンクを中心に企業の成長に合わせて貸し出しを増加させてきました。しかしバブル崩壊以降、多くの企業の倒産による貸し倒れの発生、金融機関自体の倒産・危機や自己資本規制の導入により、貸出金の回収可能性、企業の格付け評価は厳格化され、貸し出しの姿勢は厳しいものになってきました。このような金融状況の変化に対応するためにも、企業の資金運用、資金調達のための財務管理はよりレベルを高くしていくとともに、付加価値創造業務もより高度なものにする必要があります。それは同時にそれらの管理をしていく道具である、会計経理の進化であり、事業計画やキャッシュフロー計算書、原価計算、その他管理会計は不可欠のものになるでしょう。
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