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新成長戦略とパラダイム・シフト②~輝きのある日本とは?~ 2010年3月
浅 野 良 裕
新成長戦略の6つの戦略目標を一通り見てきましたが、この戦略には多くの問題があります。それは1つにはこれまで日本を支えてきた製造業や流通業、サービス業等の行方が見えてこない点であり、従来の産業の在り方(GDP)をそのまま前提として、GDPの増加等を考えていることです。従来型企業・産業がどうなるのか?そして2つ目は、これからの社会の在り方を考えるにあたって、単に新しい成長分野を部分的に考えるのではなく、全ての産業や自然・社会システムを統合的に考える視点が必要ではないかということ。また3つ目として、これらの政策を支える財政的な裏付けはどうかという点です。ただでさえ逼迫している財政状況の中で、これらの財源はどうなるのでしょうか?これらの問題を考える前にもう一度、戦略目標を支え実行する⑤科学技術戦略と⑥雇用・人材戦略について見ていきましょう。⑤科学技術立国戦略では、「世界をリードするグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション」、「世界トップレベルの大学・研究機関の増加」「理工系博士課程修了者の完全雇用」「中小企業の知財活用の推進」「IT活用」「研究開発投資のGDP比4%以上」等を目標にし制度や規制を改革すると言っています。ベンチャー創出や産学連携、研究開発環境の整備等により「知恵と人材のあふれる国・日本」また情報通信技術の活用高度化による「IT立国・日本」を目指しています。⑥雇用・人材戦力では、まず「出番と居場所のある国・日本」として、若者・女性・高齢者・障害者の就業率の向上、職業能力評価制度の導入等による雇用の促進。そして「子供の笑顔あふれる国・日本」として少子化対策や質の高い教育による人材育成を謳っています。確かに教育・人材育成は将来への投資として最も重要であり、近年大きな成長を遂げてきた北欧諸国などは教育への投資によって実現したといっても過言はないかもしれません。他の先進諸国に比べて日本での個人の教育費負担は重すぎ(高等教育も無償のところが多い)、これが少子化や学力低下の一因ともなっているようですので非常に重要な要素です。しかしながらここに記されている方策はまだまだ従来から言われていたことの羅列であり、本当の意味でのイノベーションになっているかは疑問です。なぜならグリーンにしろライフにしろまだまだ今世間に広まっている技術レベルでは解決は不可能だと思うからです。例えば環境や健康は世界的な課題であり、この2つの問題の原因は根本的には同じものかもしれません。健康は人間の身体や心の内部の異変の問題であり、環境は生物の種の絶滅も含めて人間に不可欠で密接に関係する外的環境の異変の問題ですが、ともに人間の自然(身体・環境)との付き合い方、文明の在り方、科学技術・思考の枠組み・パラダイムの問題だからです。蛹から蝶への変容、パラダイムシフトは、天動説から地動説へ変わったような世界が変わるような変化です。量子物理学や量子生物学、脳や意識・宇宙の研究の最前線では大きなシフトが起きているようです。これらの変化が個人や企業、社会の意識にまで波及する時、世界は変わり今ある膨大な諸課題も解決していくかもしれません。
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