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井の中の蛙と意識の構造 2010年5月
浅 野 良 裕
先月は、井の中から出る、また茹で蛙にならないために、広い視野と歴史的な視点を持ち、考え方とか行動を「かえる」(変える、還る、代える等)必要があることをお話してきました。しかし現実に新しい考えが浮かび、行動も変えていくことは難しいかもしれません。ここで言う「井」とは思考のパターン・枠組みのことです。この思考のパターンは個人個人、また集団集団で特殊な鋳型・テンプレートを持っており、これを自覚するのは難しく、考えてもつい堂々巡りになってしまい、新しい発想が湧いてこないことが多いからです。過去と同じ繰り返し、過去の記憶、経験の無意識的な再現が起きることがよくあります。思考、考えや行動が無意識的に行われると、反射運動のように何度も繰り返します。記憶や経験は同じことの繰り返しの場合には、良いのですが、現状に問題があり変化させる必要がある時、新しくしないといけない場合には障害になります。しかしこの記憶や経験も無自覚ではなく、自覚していれば意識的に変えていくことができ、また新しい直観も働き出し、変化が生まれます。例えば、囲碁や将棋がある程度のレベルにある人は、試合の度に終わった後、全ての手数を記憶していて並べ直すことができます。しかしそのレベルに達していない人は、直前の行った試合の内容も思い出すことができません。この違いはなぜかというと、一手一手を考えて全体の流れ、構造を理解しながら、自覚的に打っていたかそうでないかの違いです。初心者は漠然とあまり考えもなしに打っているので記憶もできないわけです。一手一手、全ての行動を自覚的に行っていると、意識的にそれを変えていくことができます。そしてより良い一手、考えは何かを純粋に考えていると、ふとある時アイデア、直観が降って来て、新しいレベル、進化へと導きます。自分自身の限界を超える時です。どこまで自分の考え、行動を意識的に行っているかどうかが重要であり、自分の限界を超えようとする時、始めて直観が現れ、進化が始まるわけです。限界=井の自覚です。企業でも創業者、そして仕事でも始めに開拓した人は、新しいものを創造するために考え抜いて意識的に行っていますので、企業や仕事の内容、本質を理解しています。しかし企業や組織に後から参加し、出来上がった業務を単に覚えて前例通り、言われたままにしている場合には、その仕事の意義、目的、本質の理解も十分でなく、漠然としている場合には、自分の仕事の意味も分からず、無自覚であり、したがってより良い方向へと変えていくこともできません。仕事は覚えるものでなく、理解するものであり、理解をすれば自動的に記憶され覚えることもでき、仕事の目的を理解していれば、より良い方法を考え変えていくことが自然にできます。井の中の蛙も、水の本質を知り、水の源泉・地下水脈を辿り、大海へと辿り着くことができるかもしれません。また本質が分かれば、空中にある水蒸気や自分の体内にある水にも出会うことができるかもしれません。地球の重力圏から脱した宇宙飛行士の山崎さんは、人間や地球は宇宙の子だと言いましたが、地球はもともと宇宙の一部であり、人類もその意味では宇宙人であり、これは重力圏を脱出しなくても意識を向けるだけで分かることです。重要なのは井という心の壁を作っているのは自分自身であり、自分自身の理解が、進化・飛躍の鍵であるということです。
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