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iPS細胞と経済、経営~人間の能力と、既存のシステム、固定観念~ 2012年10月
浅 野 良 裕
山中先生のノーベル賞受賞以来、iPS細胞は以前にも増して注目されて来ています。iPS細胞・人工多能性幹細胞により、これまでは受精卵やES細胞(胚性幹細胞)しかできなかった、筋肉や神経、血液等への多様な細胞へ転化する能力を、人工的かつ皮膚等の分化した細胞から生成することができるようになりました。これまでは筋肉や内臓等に分化した細胞は、それ以外の細胞には変われないと考えられていましたが、もう一度白紙状態の万能細胞に戻り、どんな種類の細胞にも成れるということです。したがって自分の皮膚等の別の細胞を使って病変した細胞を再生する再生医療や、iPS細胞を活用しての創薬(新薬の開発)に、大きく貢献する可能性が大きいことから、医療的視点からだけでなく、成長産業として経済的視点からも期待されています。人の細胞は、1つの受精卵から分裂して60兆もの多様な細胞に成長し、それらが絶妙の調和をとって生きています。人の心も同じように、まっさらな白紙の状態から、学び、考え、複雑に成長していきます。肉体の場合は、成人になれば大きな変化はありませんが、心は大人になってもどんどん変化し成長していきます。また時代の変化、環境の変化によっても大きく変わっていきます。しかし心もある程度まで行くと、学習や変化を嫌い、新しい情報を受け付けず、固定観念として固まってしまうことも多いようです。こうなるとその人は成長・進化しないどころか、退化してしまうことでしょう。なぜなら環境、社会が変化していくからであり、その変化に適応しないと生きるのが困難になっていくからです。同じように組織も、最初は1人から始まったものも、拡大し機能も分化していきます。最初は社長が1人ですべての業務を行っていたものが、成長すると営業や生産、経理等と組織が分かれ、業務も複雑化していきます。すでに大きな組織、システムになっている企業に、新たに入ってきた人にとっては、その組織の一部しか理解できないかもしれません。そうするとその人は組織の一部、歯車としてしか感じられず、全体との一体感は持てなくなります。自分の与えられたことを機械的にするだけで、心も固まってしまいます。そうすると次第に組織全体も固まっていき衰退していきます。生きることは、流れ動いていて安定することだからです。経済も同じように最初は単純な狩猟とか、農耕とかだったものが、多様化し今では多くの業種、業態、職業に分業化、分化しています。当初の村・共同体が主体の経済の時代はその全貌も(自然との関係も含めて)簡単に見えたものが、今では世界経済として複雑化、拡大し全体を見るのが困難になっています。貨幣がこの経済を支える血液のようなものですが、それが肥大化し暴走したり、自然・環境との不調和が発生してきています。個人、企業、経済と複雑化し、制御が困難になってきている現状からの解決策として、iPS細胞の発明はどんなヒントを与えてくれるのでしょうか?この意味を次回は考えていきます。
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