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金融円滑化法の終了と中小会計要領~経営改善と経営に役立つ会計~ 2012年8月
浅 野 良 裕
「金融円滑化法」が来年の3月で終了します。金融機関は既にその終了を見越し、「出口戦略」と言って中小企業に対する融資方針を変えて来つつあります。円滑化法そのものは、もともと資金繰りに苦しむ中小企業の時間稼ぎのためのものでしたが、必ずしもこの間に事業再生ができた企業は多くはないようです。世界経済の動向や消費税増税等、経営環境はますます厳しさを増すと思われ、限られた時間の中で企業は改革・進化を求められています。政府の方針は「日本再生戦略」でも見られるように、中小企業に対する支援策は、金融面によるものより、経営機能強化、経営改善支援、ソフト面へと移ってきており、その一つがこの「中小会計要領」の策定とその普及にあります。この「要領」の目的は、「経営に役立つ会計」です。ということは、これまでの会計は、経営の役に立っていなかったのでしょうか?会計には財務会計と管理会計の2種類あります。財務会計は、企業の財務内容、経営成績や財政状態を明らかにするために、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つの財務諸表・決算書からなります。これは主に株主や取引先等の外部報告用に作られておりますが、企業の全体像が分かるという意味では経営の役に立つはずです。もう一つは管理会計で、分析を深め経営管理に役立つ情報を提供するもので、戦略的な意思決定や部門毎、商品毎等の業績評価目的で作られ、企業毎に様々な様式があります。今回の中小会計要項が作られたのは、財務会計面では適正な会計処理がなされていないため、企業の財務内容が適正に表示されていないという問題です。これは一つには、日本における特殊事情で、国税の影響が強すぎるということが問題です。会計の処理の仕方によって税金が変わるために、税務会計ともいわれるように決算内容が左右されることがあります。また決算は税金計算の為という意識もいまだにあるため決算作業も遅く、税務申告の期限の2カ月近くかかることが多いようです。本来決算分析により課題を認識し、経営に活かすためには、遅くとも1ヶ月以内に決算を終える必要があるのではないでしょうか。(月次決算は1週間?)。もう一つ決算を歪める要因として金融機関等の評価があります。表面的な財務数値だけでなく企業の実態を多角的、的確に評価する総合的な目利き、評価基準・能力が必要です。「要領」ではこれらに対して、税とは独立した会計(主に引当金計上等)を、そして金融機関の信用を得るためにも適正な会計処理が必要だとし、社会常識にするために政策金融公庫の優遇金利等も導入しています。また過去の決算だけでなく、将来の事業計画書の作成や資金繰り表の作成等も求めており、会計を経営に役立つ道具として普及させようとしています。このコラムを始めた2005年5月「経営と会計①」の中で私は「経営の本当に必要な道具としての、複式簿記、会計」について書いていますが、計画や資金繰り、商品力や営業力評価と戦略会計、原価管理、販売管理等、経営実態の影としての会計を、経営実体そのものを進化させる道具として活かせるように貢献したいと思います。
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