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業務改革と監査 ~視点の転換~ 2009年11月
浅 野 良 裕
前回は監査とは何か、なぜ必要かについてお話してきました。この中で管理と監査の違いについて、管理は基本的に業務執行の管理であり、決められた方針・計画に従って業務が有効に行われているかどうかが問題であり、これに対して監査は、この管理・内部統制自体の有効性も含め、業務執行の方針や計画そのもの、そして意思決定の内容やプロセスそのものの有効性をチェックするものであることをお話ししてきました。つまり経営の一機能でありながら、一歩離れて業務執行の外部からより客観的に経営の有効性を見ていきます。
この監査の重要性が認識されてきたのは、現代が変革期であり、企業・経営組織体自体が変革していくためには、組織の中からの自己変革だけでは難しく、より外部からの指摘が必要とされていることからでありましょう。
今政治の世界でも、事業仕分けという形で事業・業務=予算の見直しが行われています。事業とか業務は、何らかの意味はあるので行っている当人からすれば必要だと思いがちですが、外部からより大きな視点・基準で見ると、もっと違った形で行うとか、必要性自体の認識も変わってきます。
人はいったんその業界なり、企業・組織体に入るとそこでの常識や価値観、思考パターンから物事を見がちになります。最初は白紙の状態から見ていても次第に、思考や視点のテンプレート・鋳型ができてしまい、その色メガネで物事も観てしまいます。
しかし本物のプロフェッショナルはその鋳型・色メガネ自体を変革し、業務を革新していきます。
この鋳型・色メガネは潜在意識の中に入り込んでいるため、なかなか本人は気づきません。
例えば、幼い頃視力を失くした人が、中年になってから視力を回復した時、見えるものは光の洪水で何が何だか分からないということが報告されています。単純に周りの光を眼の中に取り入れると、すべてが均質的な光なので色の違いだけで個々の物の区別がつかないようです。
また細胞を初めて顕微鏡で見たとき、ただ単に線とか形が見えるだけで、何が細胞核だとか、一つ一つの細胞の境界線とかも全く分からないとか言われます。
これらは自然現象ですが、社会現象や人間の生活は目に見えない世界を含み、また利害関係が絡むだけにより分かりにくいかもしれません。利害関係が絡みそれを近視眼的にみるとどうしても周りや未来が見えなくなってしまい、結局は損・リスクを先延ばしして問題を大きくしてしまいます。
こうしたことから外から見る監査の役割は重要になるとともに、監査をする人の責任や必要とされる能力、意識も非常に高度なものが求められます。
ただ政治の事業仕分けでは、かなりの権限を持って事業の見直しがされているようですが、企業の監査役等はその権限はありません。意思決定や執行の責任は経営者自身が負うため、監査の立場はあくまでも助言者、提案者です。しかし企業の顧客や社会への貢献度を高め、企業の価値を高めて人々の幸せな生活を築いていくという目的自体は同じであり、業務・経営の改革をしていくためには、こういった外部からの視点も重要ではないでしょうか。
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