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専門家とプロフェッショナル~3.11と意識の旋回~ 2011年6月
浅 野 良 裕
先月は経営課題発見のための企業評価の方法として、企業の概要を6つの側面・カテゴリーから観ることをお話ししました。6つの中で1から3までは、企業の基本的な目的・意識構造、顧客ニーズ、商品の品質等であり、企業活動の目的、存在意義と言えるものでした。そして4から6までは、その目的を達成するための手段体系と言えるものであり、経営資源、業務プロセス、支援システム、戦略等でした。しかし企業の目的は、社会や市場が変わればそれに連れて変わっていかざるをえません。そして3.11以降、社会の価値観は大きく変わっていくだろうと言われており、実際変わりつつあるように思われます。したがって、企業の概要に答え自己評価をしていくためには、もう一度社会全体の価値観、意識の変化を見ていく必要があります。3.11で明らかになったのは、人間と自然との関係、科学技術の水準と在り方、社会や組織の目的・在り方等に大きな課題があるということでした。そしてこの科学技術や社会・組織の在り方の中に、専門化(家)、縦割りの問題があります。原発の問題でも、個々の専門分野では発言できても、全体の対策、実行のリーダーシップを取れないと現実的な問題解決はできません。ましてや代替エネルギーとか、省エネの可能性等、多くの課題があり、これらを戦略的・統合的に解決していかなければなりません。科学技術や組織が複雑化、高度化するにつれ、それぞれの分野の専門家の育成が要請され、実際そうなってきました。しかしシステム全体を統括できる人がいないと、リスク要因が発生した場合に機能不全に陥ります。また専門家と言った場合、井の中の蛙が、井の中しか分からず、井の全体像が分からないように、井(専門分野)の本質は見えません。そして大海どころか、井の中が世界の全てだと思っていると、他者とのコミニュケーションも取れないことになってしまいます。最近テレビでもプロフェッショナルと言われる人たちが紹介されています。それらの人たちはその業界でもトップクラスの人たちだけで、それらの専門家の中でも1%もいないのではないでしょうか。井戸を掘っていくと水脈に出会いますが、その水脈が池のレベルなのか、湖に注ぐ川なのか、大海に至る大河なのかによって、そのレベルは大いに違います。大河に至れば専門分野以外にも応用がきき、他分野でも本質が分かり、コミニュケーションがとれ、全体の対策への貢献ができます。専門家が真の専門家=プロフェッショナルになるわけです。このためには限界を設けないで、専門分野を深掘りするとともに、世界全体に対する興味を持ち、他の分野もある程度極める必要があります。仕事観、経営観、芸術観、科学観、人生観、社会観、生命観、宇宙観もできてくるはずです。企業で言うと、自社のコア技術を磨き、選択と集中を極めると共に、顧客の潜在ニーズを拓き、社会貢献を意識し、社会全体の進化への貢献を意識的にしていくことかもしれません。村社会を超え、大きな水脈、世界に出会った時、今社会を覆っている閉塞感も取り払われることでありましょう。
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