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的の姿と仕事の成果 2012年6月
浅 野 良 裕
物事や仕事の良し悪しを評価するのに、「的を射る」とか「的に当てる」、「的を外す」といった表現をします。弓の的から来た言葉ですが、的は目標であり、仕事の成果や本質、プロセスを深めるのに参考になると思いますので、今月はこのテーマで考えていきます。的の形と射った矢の位置で自分の仕事を表すと、人によって的の形は様々ですし、矢の位置も多様です。的の形は、大きな○、小さな○、一重の丸、◎二重、三重、数重から、アーチェリーの競技用では十重(1点~10点)と様々あります。また矢の位置も、ど真ん中に書く人、端の方、中間あたり、はずれを含めて何本も書く人等様々です。的の形が多様なのは、仕事に対する見方の違い、弓等の的のイメージの違い等から来ているでしょうし、矢の位置は自分の仕事に対する自己評価を表していると思います。弓道やアーチェリーでは、ある程度ルールが決まっていて、的の形や距離も決まっています。しかし実際の仕事では、的ははっきりと決まっている、または見えているでしょうか?単純な作業でしたら、目標もはっきり見えているように感じるかもしれませんが、判断や意思決定、評価を必要とする仕事では、目標自体最初はぼんやりしていて、次第に明確になってくるものではないでしょうか。なぜならすべての仕事は関連し合っており、お互いに影響し、また動いているので、個々の目標自体も流動的だからです。実際に仕事をしているときには、人はその作業プロセスに埋没していることが多く、その作業さえうまくいけば、仕事は順調にいっていると思うかもしれません。しかしその仕事の与える影響まで考えると、本当に目標を達成しているかどうか疑問です。例えば原子力関係の仕事なんか、本当の意味で人類に貢献しているかどうかは、フクシマ以降その見方も大きく変わってきています。目標の設定を狭い範囲で縦割り的にしてしまうと、全体との関連が見えず、結果的に全く無駄になったり、逆効果になってしまうリスクがあります。利害関係を離れて冷静に、客観的に観ると無駄な仕事や、無駄な仕事のやり方は相当多いようです。縦割りではなく横割りも含め、利害関係を離れて外部から観ること、見える化することで見方は大きく変わってくると思います。(事業仕分けでの問題点)的は最初はピントが合わないようにぼんやりと、次第に何重にも構造化されて見えてくるはずです。一流の鍼灸師は、身体に経穴の位置が書いてなくても、瞬間的に探り出し的確にそこに鍼を打ちます。経穴の位置は人によって違い、また同じ人でも瞬間瞬間変わっていきます。仕事でも的の位置は常に変わり、見え方も変わっていきます。弓道で的の中心を正鵠と言い、核心を突くことを「正鵠を得る」と言いますが、そのためにはスピードも必要です。仕事で自己評価でなく、的の中心を捉えているかどうかを計る目安の一つは、速くできているかどうかです(はずれがなければ速い)。もう一つは的を多重円のように構造化できているかどうかであり、多重円では時間も含めて広い空間・視野ができてきます。達人になればこの多重円も消えて(内包し)ピンポイントの的になることでしょう。
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