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「金」とコロナ
今年の漢字には「金」が選ばれました。金メダルの金、補助金や支援金等の金、野球の大谷や将棋の藤井の金字塔。こうした理由によって選ばれたようです。
「今年の漢字」は1995年から始まりました。この年は阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件があり「震」、翌年からは食、倒、毒、末、金、戦、帰、虎、災、愛、命、偽、変、新、暑、絆、金、輪、税、安、金、北、災、令、そして昨年が「密」でした。
これらの漢字からその年の出来事を思い出すことができるでしょうか?
こうしてみると27年のうち殆どが1回選ばれただけで、その他は災が2回あり、金が4回と圧倒的に多く、金という字がいかに現代の世相を表しているのかが分かります。
最初の2000年の金はシドニーオリンピックと2000円札、金大中と金正日の南北首脳会談、次の金は2012年ロンドンオリンピックや、山中教授のノーベル賞、スカイツリー等の金字塔、2016年リオ五輪とピコ太郎の金色衣装。いずれもオリンピックの年であり、オリンピックが社会的な大イベントであることが知られます。
しかし今年の「金」の背後にはコロナの影が見え隠れします。人々の話題の中心であり社会生活にも多大な影響があったことは誰もが認めることではないでしょうか。東京オリンピックは開催を危ぶまれ、オリンピックの意義が問われるとともに、医療崩壊による多くの犠牲者を出しました。
また補助金や給付金、支援金はコロナ対策であり、命と経済とのバランス、選択をどうするかが問題となりました。
「金」は「キン」であるとともに「カネ」でもあります。自然の鉱物である金・キンはその黄金の輝きで人々を魅了し、貴金属、宝飾品として大切にされてきました。
他方金・カネは貨幣経済の発展とともに金貨としてその貴重な存在価値を認められ、経済の潤滑油であり、価値の尺度でありまた人々を支配する装置・道具・神として社会に君臨していきました。金貨、銀貨、銅貨はその希少性と輝きによって序列が付き、これがオリンピックのメダルの価値としても使われてきました。
今回IOCはその金権体質を問題にされましたが、選手にとっても金メダルの獲得は、名誉であり地位の補償であり、将来的にも多くの貨幣獲得につながるものでしょう。純粋なスポーツの魅力、楽しみ、限界への挑戦と、こうした世俗的な欲望とが混同されることが大きな問題かもしれません。
コロナ危機は直接の身体的な被害だけでなく、経済的な困窮からの自殺等個々人や社会に大きな傷跡を残していますが、この体験から学ぶべきことも多いはずです。
貨幣経済は以前は金本位制を取り、金の価値と貨幣の価値が連動していましたが、ニクソンショック以降これが失われ、紙幣が国家の中央銀行や米ドルの信用によって維持されて来ており、今日では仮想通貨にまで進んできました。しかしドルの信用不安により最近では各国の中央銀行は金の購入を増やしており、貨幣制度は混沌としてきています。
オミクロンの出現により新たな次元に入ったコロナ危機、自然と人工の産物とのこうした関係をもう一度再検討する必要性を感じ、「金」を選んだのかもしれません。
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