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縄文文明から学ぶ(1) ~自然と平和~
2021年7月北海道、北東北の縄文遺跡群が世界遺産に登録されて以降、縄文文明は世界的にも注目を集めている。1万6千年以上前から1万年数千年に渡って、争いのない平和な時代が続いており、世界最古と言われる土器をはじめとする文明の創生は、世界的にも異質なものであろう。
ウクライナからイスラエル、パレスチナ、中東へと戦火が広がり、第3次世界大戦の危機が現実化している現在、1万年以上にわたって平和を保ってきた縄文から学ぶことは多いのではないだろうか。今月参加した縄文ツアーの感想を含めて紹介したい。
縄文時代は狩猟採集社会と言われている。狩猟採集の場合、通常は獲物を追って移動しながら遊牧生活をしている。しかし縄文は定住化しており、栗の木を栽培する等、時には千年を超える期間同じ場所で暮らしていたと言われている。
住居は竪穴式住居であり、大地に数十㎝円形に穴を掘り、主に栗の木で柱を立て三角錐のような屋根を作って生活していた。座ると丁度目線が地面すれすれにあり、大地を這う動物と同じ目線になっている。この目線の位置はかなり重要で、建物の中でも立っていると立体的、俯瞰的に見え相手より優位な位置から見ているものが、同じ位置、もしくは低い位置から見ることになり、世界が変わって見える。また寝てみると、大地の中に包み込まれたような感覚になり、リラックスし、安心感が強まる。
ところで屋根は茅葺だと思われていたが、最近の研究では土によって覆われていたことが分かってきた。つまり上にも下にも土に囲まれた中で暮らして(休んで)いたわけである。円形の住居の真ん中から出口の辺りでは火を焚いており、このため冬も暖かく、夏は涼しい空間になっていたようである。
この住居は20年ごとに新しく立替えられていた。栗の木の構造材が20年位で傷んでくるのと、栗の木を植林して20年経つと、成長して建築材として使える太さになるからだ。貝塚も昔はゴミ捨て場と思われていたが、実際にはここには土器や装身具等も見つかっており、使った後もう一度自然に返して再生させるという、全体的に持続可能な循環型経済になっていたようだ。
遺跡の中でもう一つの重要な場所としてストーンサークルがある。直径が40mを超えた円形に、石が様々な形に並んでいる遺跡がたくさん発掘されている。ストーンサークルは同じ場所に2個以上並んで発掘されているが、並んだ方向が夏至や冬至の太陽が沈む、昇る方向を向いており、日時計等もあることから天文の知識も相当あったことが分かる。
ここでは祈りや舞等祭祀が行われており、円形の中心地と回りの石の位置とでは、受け取るエネルギーがかなり違うことが感じられる。回りを廻りながら踊ったり祈ったり、自然の意志を感じていたのかもしれない。
これらの遺跡は、海や川に近い小高い丘の上にあり、周りは森林で今でも熊が出るところが多い。これらの動物たちとも共生し、また人間同士では、定住し、全国レベルで交易があったにもかかわらず、争い、戦争がなかったのはなぜなのか、考えていきたい。
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